Japan Association of Regional Policy

日本地域政策学会会長の挨拶

日本地域政策学会 第7期会長

大宮登(高崎経済大学教授)

日本地域政策学会は2002年に、地域政策や地域づくりの理論と実践の統合を目指して、大学研究者、研究機関・自治体等職員、NPO等の団体や個人が垣根を越えて集い、学び合う場として設立されました。私はその立ち上げから関わって13年目になります。これまで、会員の熱心な研究活動により、12回の全国研究大会と12冊の「日本地域政策研究」発刊を実現してきました。会員も着実に増加し、現在400名を超し、順調な成長を遂げてきました。

昨年は、研究の活性化と深化を目的に、研究年報を年1回から年2回に倍増し、論文が完成しだい、随時投稿できるようにしました。地域政策にとって重要なテーマを掲げて全国研究大会を開催するとともに、都市、農村、行政、福祉、産業、環境等の政策課題を分科
会として継続研究をしてきました。こうした12年の積み重ねは確実に地域政策研究の理論と実践の統合を進めてきたと思われます。

しかし、課題もあります。10年を超え、活動が安定してきた半面、ややマンネリになっています。分科会や個人の研究発表等は、質量ともにやや停滞気味であり、もう一度、企画、研究推進、広報、支部活動組織等の各委員会が学会の充実に向けて、本学会の目的や
事業を再点検・評価すべき時だと思われます。私も会長として、この2年間で取り組むべき重点課題を明確にし、会員の皆さんとともに、地域政策研究の更なる充実のための組織改革に取り組んでいきます。

さて、私たちは、1990年代のバブル経済崩壊ののち、これからやってくるメガ・トレンドを、①経済のグローバル化、②高度情報化、③地球環境問題、④少子高齢化などに焦点を当て、その対策や施策立案に多くの議論を交わしてきました。実際、それらのトレンド
は予想を超えるスピードで急速に進展し、私たちの日常を決定的に方向づける基盤となっています。

例えば、少子高齢化の進展による人口減少社会の到来は、地域政策に対して深刻な課題を突き付けています。2014年に出された増田寛也座長による日本創成会議・人口減少問題検討分科会の報告(2040年には約1800の自治体の約半分が消滅する可能性がある)は大きな問題提起となりました。これらの報告を受け、国は人口減少を阻止するために本格的な組織を立ち上げて議論を開始し、全国知事会も2014年7月に「少子化非常事態宣言」を採択しています。

また、同じ時期、少子高齢化や人口減少の具体的な影響として、総務省は2013年10月1日現在における空き家戸数を公表しました。空き家は約820万戸あり、住宅全体の13.5%に当たり7戸に1戸の割合となっています。空き家のリノベーションや空き家管理など、空き家対策が地域の重要な政策課題となっています。

このような現状は、地域政策や地域づくりを中心テーマとする本学会に対して、大きな期待が集まってきています。同時に、果たすべき責任も重いものとなります。これらの問題を議論するために、全国の地域政策や地域づくりに関心のある研究者、実務家、行政担
当者、国や地方の議員など、多くの皆さんの参加を期待します。皆さんとともに、今日の日本の地域政策課題を一つ一つ、協働で解決していきたいと思います。

志のある方は奮ってご参加ください。

2014年8月1日